「ご忠告ありがとうございます。ですが、どうしても会わなきゃいけないのです」

 ほんとうは、会わなきゃいけないなんてことはない。

 いまのいままで、彼の存在を忘れていたくらいだから。

 だけど、ノーマンのことを思い出すと、会わずにはいられなくなった。

 もしかして、侯爵へのあてつけ?

 自分がそんなみっともないことをするなんて、と驚いてしまった。

「教えて下さってありがとうございます。果物を買いたいのですが、銅貨の一枚も持ち合わせていなくて」
「ちゃんと忠告したからね」

 老婆は、皺だらけの手を振った。

「アール、行きましょう」

 追い払われるようにして、老婆の前から去った。