「奥様、おはようございます」
「おはようございます」
「今朝は、天気があまりよくありませんね。いまから散歩ですか?」
「ええ」

 ダウリング侯爵家で雑用と馬の世話と馭者をしているブルーノが声をかけてきた。

 天気のことを言われ、空を見上げてみた。

 たしかに、どんより曇っている。それに肌寒いわね。

「なにか羽織った方がいいかもしれないわね。ブルーノ、アールをお願い出来るかしら? すぐに戻ってきます」
「もちろんですとも。旦那様もまだのようですし、二人で待っています」

 ブルーノは、体はいかついし侯爵ほどではないけれど強面である。だけど、彼は馬やアールにとってもやさしくしている。もちろん、わたしに対してもだけど。