「恵真、あったぞ!同じフライト」

翌月のフライトスケジュールが発表された日。

大和はマンションのダイニングテーブルで、自分と恵真のスケジュールを照らし合わせていた。

二人同じフライトを見つけると、キッチンに立つ恵真に声をかける。

「ほんとですか?どこ?」

恵真がパタパタと近づいて来た。

「ほら、ここ。千歳往復」
「ほんとだ、やったー!!」

恵真は、子どものように嬉しそうにピョンピョン跳ねる。

そんなに喜んでくれるなんて、と大和が目を細めていると、恵真がキラキラした眼差しで話し出す。

「佐倉キャプテンと乗務すると、教わることが多いから嬉しくて!」

途端に大和は、ガックリとうなだれた。

「ん?どうかしましたか?」

恵真が下から顔を覗き込んでくる。
大和はいきなり恵真を抱き上げた。

「え、ひゃあ!な、何?」

驚く恵真に、大和はグッと顔を近づける。

「恵真、俺は本気で飛行機に嫉妬してる。俺のことはキャプテンとしてしか見てくれないのか?単純に俺と一緒に飛べると喜んでくれないのか?」
「え、いえ、嬉しいです、もちろん」
「じゃあなんで、佐倉キャプテンと乗務、なんて言うんだ?どう聞いても仕事モードだろ」
「そ、それはだって、フライトはお仕事ですもん」

すると大和は、拗ねたように口をとがらせ、恵真をソファに下ろした。