その頃、通話を終えたこずえは、伊沢にメッセージを送っていた。

『おーい、伊沢ー。Emergency。Contact こずえ ASAP』

すると、すぐに電話が鳴る。

「もしもし?なんだよ、あの変なメッセージは」

開口一番そう言う伊沢に、こずえは小さくため息をつく。

「伊沢、あんた大丈夫?」
「は?なんだよ、大丈夫って」
「恵真が泣きながら電話してきたよ」

ウッと電話の向こうで伊沢は言葉を詰まらせる。

「まあでもさ、私が心配なのは恵真よりあんたよ。もう限界なんじゃない?」
「ちょっと待て、何が言いたい?」
「だーかーら!これ以上自分の気持ち抑え込むのは無理だって。恵真に言いなよ、好きだって」
「なっ、お前、何言って…」

伊沢は慌てて取り繕う。

「私にまで隠すことないでしょ?いやー、ほんとにあんたは健気だよ。航空大学校の頃からでしょ?かれこれ、何年になる?」

伊沢がボソッと、7年と呟く。

「うっひゃー!少女漫画のヒロインもびっくりの一途さだね。天然記念物レベルだよ」
「なんだよ、もう。仕方ないだろ?あいつはまったく俺のことそんなふうに見てないんだから」
「でも、じゃあなんで今日は恵真に言い返したの?」
「それは、その…。あいつが言ったんだ。俺のこと狙ってる女の子がいるかもって。俺のこと、優しいしかっこいいからって」
「ふーん。それを聞いて嬉しくはならなかったんだ?」
「ああ。だって、俺のことを異性とか関係なく友達として見てると思ってたのに、そんなセリフ…。俺を男として認識してるけど、自分は興味ないって言われてる気がしたんだ」

なるほどね、とこずえは呟く。