◇
「お、恵真! お疲れ」
その日の乗務を終え、オフィスでのデブリーフィングに向かっていると、同期の伊沢に声をかけられた。
フライトバッグを引きながら、機長と並んで歩いてくる。
おそらく恵真と同じく今日の乗務を終えたところだろう。
「伊沢くん、お疲れ様」
伊沢の隣にいる機長の原田にお辞儀をしてからそう答えると、伊沢は、くくっと笑いを噛み殺した。
「恵真。今日、千歳往復だったんだろ?」
「そうだけど。よく知ってるね」
「だって俺達、羽田でお前の後続機だったんだ。そしたら……」
思い出したように笑いながら、伊沢は隣の原田に話し出す。
「キャプテン、彼女ですよ。今日のアレ」
なに?今日のアレって……と怪訝な面持ちの恵真に、原田は、ああ!と笑顔になる。
「君だったのか。いやー、面白かったよ」
すると恵真の隣にいた野中も、嬉しそうに話に加わる。
「でしょ? 俺も思わず吹き出しちゃったよ。彼女も管制官も真面目にやり取りしててさ。いやー、シュールだったなあ」
そして三人で顔を見合わせながら声を揃えた。
「食事中の鳥!」
ああ、そのことか……と、ようやく恵真は納得する。
「恵真、このあと飯行かないか? ちょっと話したいことあってさ」
ひとしきり笑ったあと、伊沢が恵真に向き直って言う。
「いいけど。なに? 話って」
「まあ、あとでな。それとその鳥の話も詳しく聞かせてくれよ」
「おおー、それは私も聞きたいな」
原田の言葉に恵真が思わずひるむと、「キャプテン、それはまたいずれ」と伊沢がかわした。
「じゃあ恵真、あとでな」
「うん。分かった」
恵真はもう一度原田にお辞儀をしてから、野中と一緒に歩き出した。
「お、恵真! お疲れ」
その日の乗務を終え、オフィスでのデブリーフィングに向かっていると、同期の伊沢に声をかけられた。
フライトバッグを引きながら、機長と並んで歩いてくる。
おそらく恵真と同じく今日の乗務を終えたところだろう。
「伊沢くん、お疲れ様」
伊沢の隣にいる機長の原田にお辞儀をしてからそう答えると、伊沢は、くくっと笑いを噛み殺した。
「恵真。今日、千歳往復だったんだろ?」
「そうだけど。よく知ってるね」
「だって俺達、羽田でお前の後続機だったんだ。そしたら……」
思い出したように笑いながら、伊沢は隣の原田に話し出す。
「キャプテン、彼女ですよ。今日のアレ」
なに?今日のアレって……と怪訝な面持ちの恵真に、原田は、ああ!と笑顔になる。
「君だったのか。いやー、面白かったよ」
すると恵真の隣にいた野中も、嬉しそうに話に加わる。
「でしょ? 俺も思わず吹き出しちゃったよ。彼女も管制官も真面目にやり取りしててさ。いやー、シュールだったなあ」
そして三人で顔を見合わせながら声を揃えた。
「食事中の鳥!」
ああ、そのことか……と、ようやく恵真は納得する。
「恵真、このあと飯行かないか? ちょっと話したいことあってさ」
ひとしきり笑ったあと、伊沢が恵真に向き直って言う。
「いいけど。なに? 話って」
「まあ、あとでな。それとその鳥の話も詳しく聞かせてくれよ」
「おおー、それは私も聞きたいな」
原田の言葉に恵真が思わずひるむと、「キャプテン、それはまたいずれ」と伊沢がかわした。
「じゃあ恵真、あとでな」
「うん。分かった」
恵真はもう一度原田にお辞儀をしてから、野中と一緒に歩き出した。



