◇
「お待ちかねのレディの登場よ」と言われ、大和と野中は顔を上げる。
ゆるやかなカーブを描いた階段を、ボルドーのドレスに身を包んだ恵真が下りてきた。
見違えるほど大人っぽい雰囲気の恵真に、思わず大和は息を呑む。
きれいなデコルテが露わになり、鎖骨や色白のなめらかな背中も色っぽい。
髪もアップにしてうなじを見せ、耳にはイヤリング、胸元にはネックレスが輝いている。
大和と野中の前に歩み出た恵真は、はにかんだ笑みを浮かべてうつむいた。
「おー! 藤崎ちゃん。いいね! 想像以上の変身ぶり。こんなにセクシーになるとは。なあ、佐倉」
「あ、ええ。はい。そうですね」
「おいおい、なにを照れてるんだ。ここは大人の男らしくスマートに、『きれいだよ』ってささやかなきゃ」
恵真はギョッとして慌てて止める。
「いえ、あの、野中さん。なにもおっしゃらなくて結構ですから。なんならもう、私のことはお忘れください」
小さくなってそう言うと、野中は恵真の隣に来て左の肘を差し出した。
「こんなにきれいなレディを放っておくような男は、全米のヤローどもに石を投げられる。さ、どうぞ」
「はい、ありがとうございます」
恵真はおずおずと右手を野中の左肘に添えた。
野中も大和も、光沢のあるシックなスーツに身を包んでおり、とてもダンディな雰囲気だと恵真は見とれる。
外に出ると、野中が手配していたらしく大きなリムジンが停まっていて、気がつけばドレスやアクセサリー、靴やバッグなど全ての恵真の会計も済ませてくれていた。
「あとでお支払いします」と頭を下げると、野中は「今の君の給料では無理だから、機長になってからでいいよ」と冗談めかして笑う。
リムジンに乗り込み、まるでハリウッドスターのような気分を味わっていると、やがて劇場のエントランスに到着した。
運転手が開けたドアからまず野中が降り、次いで大和が降りると、野中はクイッと顔を傾けて大和に促した。
大和は身をかがめて、リムジンの中の恵真に手を差し伸べる。
「ありがとうございます」と、恵真は大和の手を借りてリムジンを降りた。
そのままスッと恵真の手を自分の左肘に持ってきて、大和は野中のうしろを歩き出す。
恵真は左手でドレスをつまみながら、大和のエスコートで劇場に足を踏み入れた。
「お待ちかねのレディの登場よ」と言われ、大和と野中は顔を上げる。
ゆるやかなカーブを描いた階段を、ボルドーのドレスに身を包んだ恵真が下りてきた。
見違えるほど大人っぽい雰囲気の恵真に、思わず大和は息を呑む。
きれいなデコルテが露わになり、鎖骨や色白のなめらかな背中も色っぽい。
髪もアップにしてうなじを見せ、耳にはイヤリング、胸元にはネックレスが輝いている。
大和と野中の前に歩み出た恵真は、はにかんだ笑みを浮かべてうつむいた。
「おー! 藤崎ちゃん。いいね! 想像以上の変身ぶり。こんなにセクシーになるとは。なあ、佐倉」
「あ、ええ。はい。そうですね」
「おいおい、なにを照れてるんだ。ここは大人の男らしくスマートに、『きれいだよ』ってささやかなきゃ」
恵真はギョッとして慌てて止める。
「いえ、あの、野中さん。なにもおっしゃらなくて結構ですから。なんならもう、私のことはお忘れください」
小さくなってそう言うと、野中は恵真の隣に来て左の肘を差し出した。
「こんなにきれいなレディを放っておくような男は、全米のヤローどもに石を投げられる。さ、どうぞ」
「はい、ありがとうございます」
恵真はおずおずと右手を野中の左肘に添えた。
野中も大和も、光沢のあるシックなスーツに身を包んでおり、とてもダンディな雰囲気だと恵真は見とれる。
外に出ると、野中が手配していたらしく大きなリムジンが停まっていて、気がつけばドレスやアクセサリー、靴やバッグなど全ての恵真の会計も済ませてくれていた。
「あとでお支払いします」と頭を下げると、野中は「今の君の給料では無理だから、機長になってからでいいよ」と冗談めかして笑う。
リムジンに乗り込み、まるでハリウッドスターのような気分を味わっていると、やがて劇場のエントランスに到着した。
運転手が開けたドアからまず野中が降り、次いで大和が降りると、野中はクイッと顔を傾けて大和に促した。
大和は身をかがめて、リムジンの中の恵真に手を差し伸べる。
「ありがとうございます」と、恵真は大和の手を借りてリムジンを降りた。
そのままスッと恵真の手を自分の左肘に持ってきて、大和は野中のうしろを歩き出す。
恵真は左手でドレスをつまみながら、大和のエスコートで劇場に足を踏み入れた。



