「かんぱーい!」

 居酒屋でカルテットの四人はグラスを合わせる。

 「はあー、うまい!格別だな、今日のビールは」
 「だな!演奏もなかなか良かったんじゃない?」
 「ですよね!お客様の反応も良かったし。まあ、演奏技術はまだまだですけど」
 「そりゃーな。でも楽しんでもらえたのが何よりじゃないか?」
 「そうですよね」

 奏の言葉に頷いた美園は、朱里を振り返った。

 「それにしても、朱里の話にはびっくり!」
 「ほんとだぜー。まさか桐生ホールディングスの社長一家が聴きに来てたなんてな」
 「しかも、次の演奏も依頼してくれるなんて」

 朱里は身体を小さくさせる。

 あのあと、控え室で皆に事情を話し、瑛の両親を紹介した。

 そこで改めて演奏を依頼され、皆は恐縮しつつも快諾してくれたのだった。

 「ほんとにもう、なんでこんなことになったのやら…。すみません」
 「なんで謝るんだよ?有り難いじゃないか」
 「そうですけど…。なんだか大ごとになっちゃって。ホームページに掲載されたりするそうですし」
 「いいんじゃなーい?これで俺も、大学生活に爪跡残せるわ」

 光一の言葉に、奏があはは!と笑い出す。

 「お前、どんな爪跡だよ」
 「とにかくさ、カルテットは存続!また次に向かってがんばろうぜ!」

 すると美園も身を乗り出す。

 「そうですよね!今回とっても楽しかったから、また次があるのって嬉しいです」
 「おお。そしたらこれからもよろしくな!」
 「はい!」

 そして四人はもう一度グラスを掲げて乾杯した。