「瑛、見て見て!パンダだよ、可愛いー」

良く晴れた次の日。
二人は朝からアニマルワールドに来ていた。

朱里は目を輝かせて、瑛の手を引っ張る。

「コロンってしてる。可愛いなあ」

まだ子どものパンダが、ツリーハウスに登ろうと足を踏ん張っていた。

「お尻フリフリだね。がんばれー」

ようやく上の段によじ登ったパンダに、朱里はやったー!とはしゃぐ。

瑛はパンダよりも、朱里ばかり見ていた。

(ほんと、可愛いなあ)

子どもの頃にもこんなふうによく一緒に出かけたが、今日の二人は違う。

互いの手をしっかり握り、微笑み合って初めてのデートを楽しんでいた。

パンダの顔のハンバーガーを食べたり、イルカやペンギンなど海の生き物を観たり。

午後はトラムツアーで広い園内を回った。

「あ、アルパカだ!あの、のほほんとした顔、瑛にそっくりだね!」
「おい」

真顔になる瑛に、朱里はさらに楽しそうに笑う。

お土産コーナーでパンダのぬいぐるみやアルパカのキーホルダーなど、たくさん買い込んでから、満面の笑みで空港に向かう。

飛行機の窓から遠ざかる和歌山の景色を眺め、しみじみと朱里が言った。

「素敵な1日だったな。瑛と友達だった時は、ただただ楽しかったけど、恋人になってからはもっと楽しくて、さらに幸せ」

瑛はふっと微笑むと、朱里の頭を自分の肩にもたれさせ、髪にそっとキスをする。

「朱里のこと、これからも、もっともっと幸せにするから」
「うん!私も。瑛のこと幸せにする」

二人は大切な思い出とたくさんの幸せを胸に抱えて、窓の外の綺麗な景色を眺めていた。