2曲目からは皆が口ずさめるような唱歌のメドレーや、映画音楽などが続く。

 懐かしい曲やかっこいいテーマソングなど、誰もが良く知る曲ばかりで、観客は飽きることなく聴き入っている。

 さらに、婦人会の皆さんが生演奏で盆踊りを踊ったり、豪華にオーケストラをバックにのど自慢大会まで始まった。

 町長が気持ち良く演歌を歌い始めてしばらくすると、カーン!とチャイムが一つなる。

 客席からはドッと笑い声が上がり、チャイムを鳴らした長島は町長にジロリと睨まれて首をすくめていた。

 明るいポップスの曲では、中高生の女の子達がポンポンを持って踊り、動揺メドレーでは、小さな子ども達の歌声が可愛く響いた。

 そして15分の休憩を挟んで第二部が始まる。

 まず、赤坂がマイクで挨拶した。

 「皆様、本日はお招き頂きありがとうございます。ご縁をいただき、今日、美しい自然に囲まれたこの土地で皆様に演奏を聴いていただけることを、団員一同心より嬉しく思っております。ここに来るバスの中で、綺麗な川を眺める事が出来ました。次に演奏致します曲は、チェコの作曲家スメタナの交響詩『我が祖国』の中の2曲目「モルダウ」です。雄大な自然や景観を称え、悠然と流れるモルダウ川を描写した曲であります。皆様も故郷を流れる川に想いを馳せながらお聴きください」

 静まり返った会場に、まるで景色が広がるかのように川の流れが音楽となって現れる。

 懐かしさ、雄大さ、自然の偉大さ。
 人を癒やす川のせせらぎ。
 色々な感情が胸に押し寄せてくる。

 朱里は舞台袖で目頭を熱くしていた。