「みなさーん、こんにちはー!」

 司会の女の子二人が元気に挨拶すると、客席からも、こんにちはーと返事が返ってきた。

 「今日は市民会館のラストステージにようこそ!私達の思い出がたくさん詰まったこの市民会館で、最後に最高の思い出を作りましょう!」

 客席から一斉に拍手が起こる。

 「では早速、今日、このステージを実現させてくれたこの町の恩人をご紹介します。桐生 瑛さんです!」

 恩人ー?!と苦笑いしつつ、瑛が下手からステージに出る。

 わー!瑛さーん!と、歓声が上がる中、瑛は深々とお辞儀をした。

 「皆様、初めまして。桐生ホールディングスの桐生 瑛と申します。色々な場所で色々な人達に良い音楽を届けたいと活動しておりましたところ、こちらの学生さんからお声をかけていただきました。そしてこの活動に賛同してくださった楽団をお招きして、本日のコンサートが実現しました。この町はとても良い所ですね。自然も人々も、とても優しくて温かい。今日、この場に集まった皆様全員で、心に残る素敵なコンサートにしましょう!」

 賛同の拍手が起きた。
 瑛は笑顔で応えると、左手をステージ中央に向ける。

 「それではどうぞ大きな拍手でお迎えください。今日の為に駆けつけてくださった、東森芸術文化センター管弦楽団の皆様です!」

 楽器を手に一斉にステージに集まる楽団員に、子ども達から、うわー!という声が上がる。

 早速1曲目の演奏が始まった。

 クラシックの定番曲。
 歌劇『ウィリアム・テル』序曲より スイス軍の行進。

 冒頭のトランペットの音が軽快に鳴り響くと、会場内の空気が一変する。

 皆がハッと息を呑み、ステージに釘付けになった。

 アップテンポの曲に自然と皆は楽しそうに身体を揺らす。

 ラストまで疾走感で駆け抜けると、大きな拍手が湧き起こった。