ゲネプロは13時までみっちり行い、演奏者は控え室で昼食と休憩時間になる。

 お弁当とお茶を並べてから、朱里はバタバタと忙しく走り回っていた。

 「朱里さーん!お客様がもうたくさん外に来てるー」
 「じゃあ開場時間早めます!準備オッケーなら開場してください」
 「朱里ちゃーん、なんかお届け物が来とるぞ」
 「あ、お花ですね。ロビーに飾ります」
 「朱里ちゃん、音響と照明の打ち合わせお願いします」
 「はい!今行きます」

 小走りで向かいながら、瑛に電話する。

 「楽団の皆さんとマエストロの誘導お願いしていい?13時50分に声掛けで、55分に舞台袖待機。あと司会の女の子達もね。それと、マイクの本数確認もお願い」
 「了解」

 何度もチェックを繰り返し、いよいよ開演5分前となった。

 客席には、最後の市民会館を目に焼き付けようと、小さなお子さんから年配の方まで、町民の皆さんが集まっている。

 舞台袖には、正装した楽団員達に混じって、学校の制服姿の中高生が緊張した面持ちで出番を待っていた。

 「みんな、今日は町の人達全員で楽しもうね!」

 朱里が声をかけると、うん!と笑顔で頷いてくれる。

 そしていよいよ14時となり、開演のベルが鳴った。