「うわー、これもだ。かれこれ10件目かな?」

田畑のパソコンを、川辺と朱里が覗き込む。

「今回はどこからのメールですか?」
「んーと、鹿児島だって」
「こりゃまた遠いなー。朱里ちゃん、どうする?」

朱里は口元に手をやって、うーんと考え込む。

「依頼を頂くのは有り難いので、片っ端からお受けしたいと思います。ただ、一度には無理なので、長期的にお待ち頂くことになりますが」
「うん、それは先方も理解してくれるだろう」
「はい。とにかく社長に報告し、どこから手を付けるか相談してみますね」

了解、と田畑と川辺は頷く。

「部長。これから社長室に相談に伺いたいと思いますが…。部長、部長?!」
「うわっ!!」

突然朱里に顔を覗き込まれて、瑛はガタガタと椅子から落ちそうになる。

「部長、話聞いてましたか?」
「え、は、話?何の?」

はあーと朱里は大きなため息をつく。

「もういいですから、とにかくついて来てください」
「え、どこへ?」
「だから、社長室!!」

仁王立ちでそう言うと、朱里は書類を手にスタスタと部屋を出て行った。