「田畑さん!川辺さん!1日遅れちゃってすみません。はい、バレンタインのチョコ」

次の日。
出勤するなり朱里は二人に、にっこりと小さな箱を渡す。

「わー、ありがとう!てっきり朱里ちゃんからはもらえないのかと思ってたよ」
「そうそう。こう見えて昨日俺達ちょっとへこんでたんだよ」
「そうなんですかー?すみません、遅れちゃって。でももちろんお二人にお渡しするつもりでしたよ!」

瑛の視線が突き刺さるが、気にせず朱里は明るく振る舞う。

「嬉しいなあ。おっ、手作りチョコだ!」
「本当だ!だから朱里ちゃん、昨日は間に合わなかったの?」
「そうとも言いますかねー?お口に合うといいんですが」

二人は早速チョコを頬張った。

「んー!うまい!」
「これ、高級チョコレート店の味だよ!」

凄いな、朱里ちゃん、ともてはやされ、えへへーと朱里は笑う。

「はい、部長もどうぞ」
「どうも!」

嫌味たっぷりに言ってから受け取った瑛は、バリッと包装紙を破ってチョコを口に放り込む。

「どうですか?美味しいでしょ?」
「当たり前だ!!」

ニヤニヤする朱里と仏頂面の瑛に、田畑と川辺は顔を見合わせて首をひねっていた。