「社長、お言葉ですが、それはプライベートの範囲ですので、そこまで関わる必要はないと思います」

「つべこべ言わずに送れ」

スマホを切った。

全く、省吾様には思いやられる。

相手の気持ちを考えずに突っ走るんだから、困ったもんだ。

辰巳省吾は俺様で、人の言うことに耳を傾けない。

女性のことになると、思ったらすぐに行動に移す。

一途な男性だ。

自分が好きなら、相手も好きって思ってるようだ。

それで何度も失敗している。

省吾は送られてきた住所をナビに入れて、ミクの元に向かった。

ここか。

ドアの前に立つとインターホンを鳴らした。

「は?い、どちら様ですか」

ミクの声が聞こえた。

「ミク?大丈夫か」

嘘、社長?

「開けてくれないか、具合が悪くて早退したと聞いて、具合大丈夫か」

「だ、大丈夫です」

「顔が見たい、開けてくれ」

ミクは周りの住人のことを考えて、仕方なくドアを開けた。

そこには省吾が立っていた。

「入るぞ」