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学校についた葉緩は机の上に教科書を広げ、気だるそうに眺めていた。



「なぜこうも数字や記号ばかり。目が回るぅ」

「葉緩ちゃん、今から勉強なの?」



ぶつぶつと呪文のように教科書に出てくる記号を暗記しようとする葉緩。

それを困惑した様子で柚姫が葉緩の前に立ち、見下ろしていた。



「私、留年して姫と桐哉くんと離れるということにだけはならないよう全力で頑張ります」



まったく働かない頭に葉緩は机に突っ伏し、柚姫に強気なのか弱気なのか捕らえがたい発言をした。


「ファイト! 葉緩ちゃんなら出来る!」


ぐっと手を握りしめ、応援してくる柚姫に葉緩はダメージを受ける。


(何故でしょう。守る対象に応援されるとは、非常に不甲斐ない気持ちとなるのです)



しょぼくれる葉緩の隣に葵斗がいつものようにさらっと現れる。



「葉緩、頑張ってね」

「はうっ! も、望月くん……」



相変わらず気配がない。

なんとなく葵斗も忍びかそれに類する者なのだろうと察していたが、口には出せなかった。

ふてくされて葉緩は唇を尖らせる。

その愛らしさに葵斗は柚姫と目をあわせ、ほのぼのと笑っていた。



「テスト終わったら葉緩の好きな抹茶パフェ、食べに行こう。草餅も美味しいんだ」

「パフェ~、頑張りまする~」


はて、いつ葉緩は葵斗に好きな食べ物の話をしただろう。

しかし今は目の前のテストを突破することが優先な葉緩は考えることを放棄するのであった。