保健室の窓から夕陽が差し込む。

その眩しさに葉緩は覚醒し、慌てて起き上がる。


「な、なんたる不覚! 寝てしまったのですか!?」


あたりを見回すも誰もいない。

葵斗はすでに去ったようだ。

バレたのか、バレていないのか。

ひやひやしながらも今この場にいないことに胸をなでおろす。



「──白夜!」



その名を呼ぶと、窓の外から白蛇が現れる。

シュルシュルと這いより、煙を出して人の形へと変貌した。

金色の瞳孔を鋭く尖らせ、にぃっと笑う。



「学校で呼び出しはしないのではなかったか?」

「共に行動していればわかるでしょう!? 望月くんは危険です。なにゆえ私の気配を読む?」

「葉緩殿が未熟なだけではないか?」

「なにをぅ! 私の隠れ身の術は父上にも認められてるというのに!」


そこまで言い、別の考えが過る。


「はっ! まさかあやつ、相当の手練!? いや、でも……」


良い線まで行きそうな時、それは遮られる。



「キャアアアアアアッ!!!」



保健室にまで響くほどの女性の悲鳴が聞こえてきた。


「なにごと!?」


危険と判断した葉緩はベッドから飛び出し、風のように保健室から出ていった。


葉緩は深く考える前に行動する癖がある。

それは日ごろから宗芭に怒られていたが、なかなか治らなかった。


「やれやれ……」


呆れながらも白夜は蛇の姿に戻り、床を這って扉から出ていく。

誰にも見られることなく葉緩を追いかけていくのであった。