白夜を置いて走り去った葉緩は家へと帰り、部屋にこもる。

ベッドの上に腰掛け、お気に入りのぬいぐるみを抱きしめながら唇を尖らせる。



「で、結局。 ちゃっかり部屋に不法侵入ですか」

「葉緩の部屋、かわいいね」



葉緩は自分の家のため、真っ当に玄関口から入ったがちゃっかりと葵斗もついてきていた。

何も言わないでいると、何も言わずに部屋に入る。

何食わぬ顔で絨毯に座り込むものだから、葉緩は口から火を吹いていた。

あまりの節操なしに腹を立てる。



「ものすごーく今更ですけど、葵斗くんって結構Sっ気が強いですよね。というか変態? 葉名さんに対して強引だったのではないですか?」

「男はみんな変態だよ? 好きな女の子は可愛いものだし、構いたいし構ってほしいし」



にこにこゆるゆるな笑顔な様子を見て、眉間にシワがよる。

不健全で、下心満載に葉緩は思いきりぬいぐるみを投げつけた。



「いい感じに言えたみたいな顔しないでください。葉名さんが主様たちに会えなかったらどうなってたか、少しは反省してくださいよ」

「あー、それはねー。うん、綺麗事にはならないよねー」



ぬいぐるみを顔で受け止め、落ちてきたそれを受け止める。

俯くと青い瞳が陰りだす。

憂いに満ちた表情を見るとまるでこちらが悪者になった気分だ。

だが女として譲れないものもある。

時代が現代ならば、蒼依の行動は無責任すぎるものだからだ。

桐人と柚が葉名を助けてくれなかったら、母子ともにどうなっていたかと想像するだけゾッとした。

ゆえに葉緩は折れてはいけない。

ましてや桐哉と柚姫の健全なる子孫繫栄を願っているのだから、その志は固かった。


それを葵斗も反省しているのか、ぬいぐるみを手放し、葉緩の前に膝をつく。

小さな葉緩の手を両手で包み込み、じっと見つめてきた。