ヴァンパイアの花嫁

やはり男性の嘘だった。だが、男性はレジーナを離すことなく顔を真っ赤にして男の子を怒鳴り付ける。

「だから何だって言うんだ！お前に関係ないだろ！」

その怒鳴り声にレジーナはビクリと肩を震わせたものの、男の子は一切動じることなく男性を静かに見つめる。そして息を吐いた後、レジーナに言った。

「目、少しの間閉じていろ」

「えっ？」

「早く」

「う、うん」

レジーナは目を閉じる。すると痛いほど強く掴んでいた男性の手の感触が一瞬にして消えてしまった。そして、強い風が頬に当たる。

（何？何が起きてるの？）

強く目を閉じるレジーナは、目を開けたい衝動を何とか堪える。数秒後、男の子が「もういいぞ」と言い、レジーナは目を開けた。

「あれ？」

そこにはあの男性はどこにもいなかった。周りにいる人たちも、何事もなかったかのように歩いている。

「あの男の人のことならもう大丈夫だ」

男の子がそう言い、「よく頑張ったな」と言いレジーナの頭に優しく触れる。刹那、一気に緊張が解けたレジーナの目から涙が溢れていった。