これから何をされるのか、レジーナには想像することはできなかった。だが、知らない男性に連れて行かれるという恐怖は大きく、レジーナは涙を浮かべながら周りにいる大人たちを見る。

(助けて!誰か助けて!)

だが、レジーナと目が合うと大人たちはどこか気まずそうに目を逸らす。誰も味方がいない。そうレジーナが絶望を感じている間にも、彼女の体は治安が悪いと言われる裏路地に引きずり込まれようとしている。その時だった。

「何やってんだよ、おっさん。レディーを乱暴に掴んでんじゃねぇぞ」

レジーナの腕を掴んでいる男性の手を、誰かが掴む。レジーナが腕の主を見れば、そこにいたのは黒い髪に青い瞳を持った男の子がいた。歳はレジーナより少し上に見える。

(助けに来てくれたの?)

まるで童話に登場する王子のような華やかな男の子に、レジーナは胸を高鳴らせる。だが、目の前にいるのは力のある大人だ。そんな大人にも男の子は動じることなく言う。

「俺は見てたぞ。お前がこの女の子がぶつかった時、わざと服にシミを作ってたところ。汚い真似してんじゃねぇよ!」