「お嬢ちゃんがぶつかったせいで、ここ汚れたんだけど?」

男性は着ているシャツの前側にできたシミを指差す。だが、レジーナがぶつかったのは背後だ。そのシミは関係ない。

「えっ?私がぶつかったのは後ろですよね?」

レジーナがそう疑問をぶつけるも、男性は「違うよ。お嬢ちゃんがぶつかったのはこっち。だからお金払ってよ。金貨二十枚」と言って聞かない。

レジーナは持って来たポシェットの中を見る。ポシェットには金貨が三枚しか入っていない。

「ごめんなさい。お金、足りません」

そうレジーナが言うと、男性はニヤリと怪しげに笑う。そしてレジーナの手を乱暴に掴んだ。

「お金がないなら稼いでもらおうか。お嬢ちゃん可愛いから、きっと何十枚も金貨を稼げるぜ」

「や、やめて!離して!」

怖くなり、レジーナは男性の手を振り解こうともがく。だが、大人の力に敵うはずもなかった。レジーナは腕を掴まれまま引きずられていく。両足だけが何度も虚しく地面を叩いた。