狂愛メランコリー

     ◇



 鳴り響くアラームを止め、そっと目を開けた。
 たくさん泣いたせいで瞬きが重い。

 あのあと、病院からどうやって帰ってきたのかも覚えていないけれど、気づいたらベッドの上だった。

(向坂くん……)

 心にぽっかりと空いた空洞に、冷たい風が吹き抜ける。
 この喪失感が、深い悲しみが、埋まる日は来るのだろうか。

 彼のいない世界で、わたしは生きていけるのかな。

 ────学校へ行く支度を整えながら、ふと気がつく。

 ループから抜け出したからか、嘘みたいに身体が軽くなっていた。



 教室に入って机に鞄を置いたとき、蒼くんが歩み寄ってきた。

「大丈夫?」

 そんなわけがなくても、そう聞かれるとどうしてか首を縦に振ってしまう。

 いまさら彼に強がる必要なんてないのに。

「うん……大丈夫だよ」

「本当に? そんなはずないよね……。急に理人くんがあんなことになっちゃって」

 無理に浮かべた笑顔が引きつった。

 向坂くんじゃなくて、理人?
 ううん、それ以前にこの台詞は────。

「でも無理しないでよ? 菜乃ちゃんまで倒れたら大変だし」

 唖然とした。
 呼吸すら忘れ、固まったまま彼を見つめる。

「……どうかしたの?」

 首を傾げる蒼くんに何か言おうとしたとき、ころころと足元に何かが転がってきた。

 小テストの勉強をしていた女の子が拾おうと手を伸ばす。
 そして、スマホを囲む男の子たち。
 別の彼にぶつかって、水がこぼれる。

「あ、蒼くん……。今日って何日!?」

 勢いよく彼の上腕を掴み、縋るように尋ねた。

「え? えっと、7日かな」

 それを聞き、思わずたたらを踏んだ。

(まだ……)

 まだ、今日(ループ)は終わっていない。
 明日は来ていない────ということは。

「向坂くん……!」

 彼は生きている。

 困惑したように引き止める声を背に、わたしは教室を飛び出した。