恋ノ初風

「オールするのはなしだぞ。それは次の日が休みのときとかにやるんだ」

「ええー。約束だからね?」

 テンションが上った私は、次の日が学校にも関わらず、オールをしようなんていうことを口走った。案の定反対されたわけだけど、問題が1つ残っている

「私どこで寝るの?」

「え?母さんの布団は?」

「いつものとこでしょ?なかったの」

 凛ママの寝室をちらりと覗いたときに、いつもはあるはずの布団が無くて、てっきりもう凛が持って上がってるのかと思ったのに。だってあの部屋は押し入れがないから布団を片付けるスペースはないはず。

「じゃあここで寝るしかないだろ」

 なんの迷いもなく食指を立てた先は凛のベッド。確かにここなら2人で寝れる。

「じゃあ私落ちたくないから奥もーらい」

「あ?いいぞ…」

 あーベットだ。凛の家ベットは私の家にある私のものよりも大きい。私が寝転がっていて凛が転がれるくらいのスペースがある。

「これふたり乗っても大丈夫か?折れたりしないよな」

「大丈夫だって。私だって軽いし。二人合わせた一人でも寝れるよ。多分。ほら乗ってみてよ」

 隣をトントンとして凛をベットに座るように促した。凛は素直に私の隣に寝転がる。案の定、ふたりで寝転がってもスペースは余った。

「ほんとだな」

 カーテンからチラチラと覗く空は、もう暗くなっていた。枕元に置かれた目覚まし時計は夜の9時を指している。私はちらりと見えた月を見るのに体を起こして窓縁に手を置いた。

「今日は朧月だね」

「朧月?なんだそれ」

「雲に隠れてぼんやり光る月のことだよ。風情がありますなあ」

 私が観ていると凛も興味が湧いたのか私の隣に来た。こころなしか、前よりも凛が言葉に興味を持ってくれている気がする。前も月の話をしたことがあったけど、その時は今みたいに興味を持たずにふーんだとかへーだとかしか反応がなかった。だから私は、少し嬉しい。その感情が、顔に現れて笑顔を生んだ。

「そう言えば、和歌に幼馴染を書いた歌はないんだよ。あの当時はそんなものなかったのかな」

「ならおまえが作りゃいいじゃん。現代版和歌」

「ええ!?わたし?んー……」

 少し考えたけど、眠気に騙されて私の思考能力はもう休暇に入っていた。

「また今度。私もう眠い」