「七緒は俺に会いたくなかった?」
ここは恋人っぽく返さなければと意を決する。
「会いたかったです」
言いながら唇を震わせると、聖はおかしそうに鼻から息を漏らして微笑んだ。
その彼の目線が七緒から少し逸れる。
「おばあ様、この度は私のわがままをお許しくださいましてありがとうございます」
聖が丁寧に頭を下げて挨拶をする。
「いえいえ、いずれ結婚となればここを出ていくのですから、それが早まっただけ。人生は意外と短いものですから、夫婦として一緒に生活できる時間はできるだけ確保したほうがいいのよ」
夫を早くに亡くしたからこその言葉なのかもしれない。七緒と聖には夫婦として長く一緒にいてもらいたい想いがあるのだろう。
「そのお言葉、ありがたくいただきます。では七緒さん、行こうか。荷物はこれかな?」



