「意識レベルが低いな。気道を確保して気管挿管。血圧は?」
「七十の百二十です」


聖の問いかけに看護師が素早く答える。


「維持されてるか。念のため頭部CT検査に回そう。青山(あおやま)先生は?」
「たしか当直でいらっしゃると思います」
「CT検査の間に心電図を確認しておくから、青山先生にも連絡をして」
「承知しました」


聖の指示に看護師が素早くCT検査の準備と青山へ連絡を入れる。
聖はパソコンが置かれた処置室内のデスクに行き、該当患者の心電図を真剣な様子で確認しはじめた。


「STが上昇してるな……」


STとは心電図で表される波形である。心筋梗塞を発症すると上昇する。
血圧が維持されているにも関わらず意識状態が低いため、脳血管障害に合併した心筋障害の可能性がある。場合によっては脳外科と心臓血管外科との連携で処置が必要かもしれない。