雨隠れで食事をしてから七緒を自宅に送り届け、緊急の連絡を受けた聖はすぐに病院へ駆けつけた。

聖の祖父が院長を務める加賀谷医療センターはあらゆる科を網羅し、屋上にはヘリポートを備え救命救急も担う、地域の中核病院として名高い病院である。

日本の最高峰と名高い大学の医学部を出た聖は大学病院で研修医を務めた後、ここへやって来た。若手ながら心臓血管外科を取り仕切る立場にあり、通常の診療はもちろん緊急搬送されてきた患者への処置も行っている。

医局の並びにある自室でジャケットから着替えた白衣を翻し、急いで救急病棟へ向かう。
患者はアルコールの大量摂取と激しい腰痛での搬送だったが、当直医が心電図を施行したところ異常が見つかったとの連絡だった。

救急病棟の処置室は看護師や医師が忙しなく動き、様々な医療機器の音でひしめいている。


「お待たせ」
「加賀谷先生、お帰りになったばかりなのに申し訳ありません」
「いや、患者さんは?」


看護師に案内されてベッドが並んだ処置室の一画に向かう。白いカーテンを開けると五十代の男性が横たわっていた。聖が声を掛けても反応が鈍い。