「ばれたか」
聖はフフンと笑い、「ともかく行こう」と七緒の手をぐいと引っ張る。コーヒーショップの前にハザードランプをつけて止まっていた彼の車に乗せられた。
「嫌いな食べ物は?」
発進して早々質問され、「とくにはありませんが、辛いものはちょっと苦手です」と答える。高校生のときにししとうと青唐辛子を間違えて料理に使い、ひどい目に遭って以来トラウマだ。
「じゃ大丈夫だな」
「どこへ行くんですか?」
「京懐石を食べさせてくれる店」
改まって京懐石を食べるのは初めて。もしかして立派な日本庭園のある由緒正しい料亭だろうか。
「私、こんな格好ですけど平気ですか?」
ピッチが異なるプリーツをミックスしたベージュのスカートにピンクベージュのニットを合わせただけのなんの変哲もないスタイルは、かしこまった席には不釣り合い。



