敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


全然聞こえなかった。


「集中してなにを読んでるのかと思ったら写真集とはね。そこへ行きたいのか」


開いていたページの写真は、ボリビアのウユニ塩湖だった。満点の星空が地面に反射している夜のドラマティックな風景だ。


「こういう景色を実際に見たら、きっと自分の悩みなんてちっぽけなものに思えるだろうなって」
「悩みなら俺が聞こう」
「遠慮します」
「即答するなよ」


後頭部をコツンとされた。


「目が満たされたのなら、次は腹だ。食事に行こう」
「ここで作戦会議じゃないんですか?」


コーヒーを飲みながら束の間話し合うだけだと考えていた。


「せっかくフィアンセ? 恋人? に会ったんだから食事しないでどうする」
「疑問符を繋げないでください」
「じゃあ結婚予定の恋人。肯定なら満足?」
「それもちょっと……」