敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


『まぁそう言うな。作戦会議がまだ中途半端だ。昨日、うちの祖父に会ったんだって?』


早速、聖の耳に入ったようだ。おそらく同居の話も聞かされているだろう。


「病院でたまたま」
『妙な話を持ちかけられなかったか?』


やはりビンゴだ。


『ともかく会って話そう。今どこにいる?』
「お仕事は終わったんですか?」


スマートフォンを右手に持ち替え、左手を捻って腕時計をたしかめる。時刻は五時半過ぎ。病院なら診察は終わっている時間だ。

同居についての作戦会議なら、大勢の人が行き交う雑踏の中での電話よりも直接会ったほうがいい。尋ねられて素直に近くの駅名を告げる。


『そうだな……そこなら三十分あれば着くだろう。近くに待っていられる場所はある?』


ぐるりと視線を回して、コーヒーショップを見つけた。