真っすぐ自宅に帰る気分になれず、本屋やアパレルショップへ立ち寄っているうちに夕暮れ時になっていた。
そろそろ帰ろうと駅に向かって歩いていると、バッグの中でスマートフォンがヴヴヴと震えはじめる。取り出してみたら、それは一昨日登録したばかりの聖からの着信だった。
(えっ、なんだろう。……もしかして同居のことかな)
立ち止まり、歩道の端に寄って応答をタップする。
「七緒です」
『……今、どこ? 出先?』
電話越しに街の雑踏が聞こえたみたいだ。
「はい」
『今から会えないか』
「えっ? どうしてですか?」
公衆の面前なのを忘れて、つい大きな声になる。七緒のそばを通り過ぎていく人が怪訝そうな目を向けていった。
『その反応はおかしいだろう。俺たち、一応恋人同士だぞ』
「それは祖母たちの前だけで」



