どうして恵麻からこんな仕打ちを受けなければならないのだろう。一から十までわからないことづくしだ。
「ごめん、七緒」
どうして唯斗が謝るのか。もう彼の謝罪は聞きたくはない。
「じゃ、私行くね」
右手に掴んだ封筒を軽く振って踵を返す。
「七緒!」
唯斗が七緒を呼び止めたが、すぐさま恵麻が「唯斗さん」と名前だけで制すのを背中で感じた。そもそも振り返るつもりも七緒にはないけれど。
大股でエレベーターの前まで歩き、開ボタンを押して箱にそのまま乗る。
下降をはじめた中でふぅと大きく息を吐き出す。憂鬱な予定ができ、心が鉛のように重くなった。



