お餅をくるむのは塩漬けされた桜葉。口の中で餡と一緒に甘じょっぱさが広がり、もっちりとした触感が口に長く残る。
中学生くらいまでは洋菓子が好きだったのに、祖母の影響で七緒はいつの間にか和菓子好きになっていた。
「今日、病院で聖さんのおじい様に会ったの」
「まぁ、そうだったの。病院で見かけるなんてめったにないのに奇遇ね」
自室にこもって仕事をしているほうが多いのか、それとも外来診療で診察室にいるのか。どちらにしても忙しいのはたしかだ。
「昨日、聖さんのマンションで私も一緒に暮らす話になったの?」
「そんな話は……ええ、そういえばしたかしら」
お酒を飲んだせいか記憶が曖昧なようだ。孝枝は少し思案するように目線を泳がせてから答えた。
「おばあちゃんはそれでもいいの? 私がここを出ていったらひとりになっちゃうじゃない」
「七緒が聖さんとそうしたいのなら、私は反対しないわ。だいたい私も子どもじゃないんだから。今年は古希よ」
「だから心配なの」



