敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


「久世です」
「今日はお薬だけですね? ではこちらに記入していただけますか?」


代理人が受け取るための書類に七緒の名前などを記載し、スタッフに手渡す。


「では、もう少々お待ちくださいませ」


ハキハキとした女性に会釈で返し、ちょうどひとつ空いた椅子に腰を下ろした。

どうしたらいいの。
頭の中はそれでいっぱい。

しかし聖は頷かないだろう。可能なのは恋人のふりまで。他人を部屋に入れることに抵抗があるなら、きっと同居には賛成しない。

(大丈夫だよ、絶対)

七緒は自分にそう言い聞かせ、名前を呼ばれるのをひたすら待った。