敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


間髪容れず返された。即答だ。


「結婚したくないんですか?」
「そうだね。したくないし興味がない」


軽い調子だった口調が急にトーンダウンする。幼い頃に母親が家を出て離婚したのも影響しているのかもしれない。結婚に夢を見られなくても当然の経験をしただろうから。


「七緒は?」
「私もそうですね。ひどい失恋をしたので、恋愛も自信がないです」


付き合って即浮気されて相手の女性が妊娠なんて、初めての恋愛経験にしてはパンチが効き過ぎている。ごく普通の恋愛をしたかった。


「七緒とクルーズ船で出会ったのは、ある意味運命かもしれないな」


なんとも思っていない男とはいえ、ハイスペックなイケメンドクター。真意は違うとわかっていても、〝運命の出会い〟と言われて心が揺れない女性はいないだろう。

でも、聖は同じく結婚に興味のない七緒が好都合なだけ。少なくとも七緒と〝付き合っている〟間は、お見合い攻撃から逃れられるから。