「私の話はこのくらいにして、次は聖さんの番です。お医者様って聞きましたが、何科が専門ですか?」
七緒の話を強制終了させ、強引に切り替える。
「心臓が専門。心臓血管外科医」
「エリートですね」
白衣姿で病院内を颯爽と歩く姿を想像した。容姿がいいから見栄えは抜群だ。
「エリートかどうかはべつとして、高い倫理観と使命感なら持っているつもり」
「倫理観と使命感……。高尚ですね」
ほかにどう返したらいいのかわからない。
「料理人の七緒だってそうだろう? 食材の命をいただいてそれを食べ物にする、いわば神事だ」
単なる料理が神がかり的な所業に聞こえる。
「……そんなふうに考えたことはありませんでした」
「無意識なのかもしれないけど、使命感がなければ愚直においしい料理を追求するなんてできないんじゃないか?」



