愛らしい彼女の寝顔を眺めながら、聖はふと出会ったときのことを思い出した。

七緒との出会いは衝撃的だった。

見合い相手とは露知らず偽りの恋人に仕立て上げ、お互いの家族に紹介し合うなど普通では起こらない展開。そのうえ、さらなる祖父の差し金で同居する事態に発展した。

今まで恋愛をしてこなかったわけではない。しかし、恋愛にのめり込むほど相手に向き合わず、いつも仕事や自分優先。そうこうしているうちに相手から離れていくのが常だった。

もとより両親が離婚しているため結婚に対していいイメージはなく、一生独り身でいい、このまま医療の世界に身を投じるだけの人生だって素晴らしいじゃないか。そう考えていたのは、大きな病院を経営する祖父や生前、心臓血管外科医として優秀な腕を持っていた父が誇りだったから。

七緒との同居は興味のない結婚から完全に逃れるためだった。祖父たちの目を誤魔化すために彼女に給料を支払うことで家事全般をお願いし、ほとぼりが冷めるまで一緒に暮らせばいい。

それでおしまいのはずだった。

ところが七緒と生活していくうちに気持ちに変化が生じていく。