「それじゃ改めて言わせてもらうよ」


聖はケースから取り出した指輪をしっかりと持ち、七緒の左手を取った。それまでの冗談めかした雰囲気を封印し、いつになく真剣な目で七緒を見つめる。


「七緒、結婚してほしい」


聖のプロポーズは二度目なのに、一度目以上に胸が熱くてたまらない。


「……はい、私でよければよろしくお願いします」


聖は優しく微笑み、今度こそ七緒の左手の薬指に指輪を滑らせた。
ぴたりとはまった指輪がデッキのライトに照らされてキラキラ輝く。


「これから先の人生、ふたりで楽しく過ごしていこうな」


頷きながら微笑み返すと同時に腰を引き寄せられ、唇が重なった。
聖となら、きっとそれができると自信をもって言える。

湿気を孕んだ潮風が、ふたりの門出を祝うように軽やかに舞った。