敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


首を大きく縦に振り頷く。
まさにその通り。ふたりの演技次第で未来ががらりと変わる。


「まずはお互いのことを知らなければ話にならない。さっきみたいなヘマはなるべく避けよう」


そう言われて思い出した。寄りかかっていたシートの背もたれから体をパッと起こす。七緒もその話をしたかった。


「あのときどうして恋愛小説って言ったんですか? 聖さん、そういう系の本、読まないですよね?」
「俺が胸キュンを求めるように見える?」


眉を上げ下げして微笑む。


「見えないからミステリーと言ったんです」


一瞬ハードボイルド系と悩んだが、老若男女問わず幅広い層に読まれるミステリーに賭けた。同じ本を手に取る設定だったら、聖も七緒も興味がなければ成り立たない。


「俺も七緒に合わせたつもり。ラブロマンスとか好きだろう?」
「それは好きですけど……」