敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


「加賀谷先生、ちょっとよろしいでしょうか」


手術室から出てきた看護師が聖を呼びに来た。


「ああ、今すぐ行く」


背もたれから体を起こしてそう返し、素早く立ち上がる。


「今夜は病院に泊まることになりそうだ」
「わかってます」
「この埋め合わせは必ずするから」
「大丈夫ですよ。倍返しを期待して待ってます」


わざと明るく返すと、聖はようやく笑みを浮かべた。


「期待にそえるよう努めます」


胸に手をあてて仰々しく答え、聖が手術室に向かって歩きだす。そして、背を向けたまま右手を上げてひらひらと振った。