敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


肩から息を吐き出し、脱力する。


「ちょっと話せるか?」
「え? あ、はい、でも聖さん、大丈夫なんですか?」


七緒は待っていただけだから平気だが、聖は疲れているのではないか。


「七緒に話しておきたいことがあるから」


聖がそう言うのなら、と従う。つい先ほどまで座っていたソファに並んで腰を下ろした。
聖は足を軽く開き、両膝に肘を突いて前傾姿勢になる。


「若林江梨子さんは、俺の母親だ」
「……え?」


聖から聞かされる言葉にはこれまでたくさん驚かされてきたが、江梨子が母親だという打ち明け話は、そのどれよりも抜きん出ていた。

ホテルでの江梨子の様子から知り合いだと想像はしたが、まさか親子だったとは。


「俺が小さいときに家を出ていったきり会っていないから、顔を見てもピンとこなかった」