敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


白い壁が続く病院の通路は夜の十時を過ぎ、静かな時を刻んでいた。
ソファに座る七緒は、ひたすら江梨子の無事を祈るのみ。救急車で病院に運ばれた江梨子は、ただ今、聖による緊急手術が行われている。

開始から五時間以上が経過。刻一刻と流れる時間が途方もなく長く、祈り続ける七緒にも疲れが滲んでいた。

しかしそれ以上に、聖は江梨子の命を救うべく戦っているのだと自分を鼓舞する。祈るしかできないのが心許ないが、今の七緒にできるのはそれだけだ。

ふと、手術中の赤いランプが消える。


「……終わったんだ」


ゆっくり立ち上がり、中から人が出てくるのを待っていると、青いスクラブ姿の聖が自動ドアから出てきた。疲れた顔にも達成感のある表情に、手術の成功を予感する。


「聖さん、社長は?」


駆け寄って尋ねる七緒に聖は微笑んだ。


「もちろん助けたよ」
「よかった……。ありがとうございます」