江梨子をタンカに乗せ、運びはじめた隊員の後を聖が追っていく。
「私は加賀谷医療センターの心臓血管外科医なので、このままそちらへ運んでいただけますか。私が病院でただちに処置いたします」
「承知いたしました」
隊員は驚いて目を見張った後、足取りを速めて救急車に向かった。
江梨子のバッグを持ち、七緒もその後を追いかける。救急車まで行くと、聖もそこに乗り込んだ。
「七緒、悪い。今夜は一緒に過ごせそうにない」
「わかってます。私もタクシーで追いかけますが、社長をどうかよろしくお願いします」
目の前の患者を放っておけない聖のほうがずっと素敵だ。
七緒が頭を下げると救急車のドアが閉まり、サイレンを鳴らし、赤色灯を回して走りだす。ホテルのエントランスに並んだタクシーに乗り込み、七緒も加賀谷医療センターを目指した。



