聖は首を傾げながら口角を上げた。
つまり七緒には〝女性〟を感じないから意識せずに済むと言いたいのだろう。
だとしたら喜んでばかりもいられない。なにしろ七緒が元彼に振られた理由も似たようなものだから。
「乗って」
聖が不意に足を止めたのは、車に疎い七緒でも知っている高級車の前だった。助手席に回り込み、ドアを開けて恭しく〝どうぞ〟と手を添える。
人並み外れた容姿の男にそうされて、照れない女性はいないだろう。ぎこちなく目を逸らし、七緒は「ありがとうございます」と小さくお礼をして乗り込んだ。
聖が運転席に乗ってすぐ自宅の場所を聞かれ、カーナビに登録してから車が発進する。
「早速、作戦会議をしようか」
なんの作戦か聞くまでもない。ふたりの今後についてだろう。
「なんだか仰々しいですね」
「そりゃそうだよ。ふたりの結婚が絡んでいるんだから重要案件だ」
「たしかにそうかもしれませんね」



