「社長、しっかりしてください。聞こえますか?」
そばに跪き、声を掛ける。しかし江梨子は目を開けるどころか、突然ぴたりと動かなくなった。
「えっ、社長!?」
「急性心筋梗塞だ。AEDは? ここにAEDは置いてないか?」
近くにいた店員に尋ねると、「あ、あります!」と大急ぎでその場を離れた。
(どうしよう……!)
急な展開に驚きを隠せず、七緒は江梨子の手を握ってあたふたするばかり。
「七緒、ちょっと下がって」
聖に言われ、足をもつれさせながら江梨子から離れる。
聖は江梨子の額に片手をあて、もう片方の手の人差し指と中指の二本を顎の先に添えて持ち上げた。頭を後方に傾け気道を確保し、江梨子の鼻を摘まんで――。
口から息をゆっくり吹き込んだ。人工呼吸だ。



