敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


訂正の言葉も、ただの照れ隠しと受け取られたらしい。


「気にしなくてもいいのよ。私も利幸さんともう少しお話したいから。聖さん、七緒をよろしくお願いします」


反射的に聖を見たら、「お任せください」と胸に手をあててキラキラした笑顔を孝枝に向けた。

(お任せって……!)

いったいなにを考えているのか、さっぱり掴めない。困惑の目で訴えたが、「七緒、行こうか」と孝枝に向けたままの極上スマイルで返された。

どさくさに紛れて呼び捨て。さらに腰に手を添え、完全に恋人気取りだ。

仕方なく利幸に頭を下げて挨拶をし、聖にエスコートされて歩きはじめた。


「どういうつもりですか?」


孝枝たちに声が届かない場所まで離れたのを見計らい、聖に語気をわずかに荒げる。


「どういうつもりもなにも、ああ言われたら仕方ないよ。恋人だと紹介したのに帰りは送れませんでは話にならない」