敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


聖はそれを庇おうとしてくれている。
言葉を忘れたように呆けていると、聖は手を伸ばして七緒の頭をポンと撫でた。


「そういうときこそ俺の出番じゃないか。ふたりで一泡食わしてやろう」


偽りとはいえ、恋人であり婚約者。その役を生かせと言いたいのだろう。
言葉と裏腹に思いやりに満ちた言葉に胸がいっぱいになる。


「聖さん……」
「な?」


小首を傾げ七緒に念を押す聖にコクンと頷く。涙が出そうになったため、必死に唇を噛みしめて堪えた。


「そうと決まれば……」


聖は数秒間考えるように宙に視線を彷徨わせた後、テーブルに置いていたスマートフォンを手に取った。ソファから立ち上がり、誰かに電話を掛けはじめる。


「遅くに悪い。ちょっと頼みたいことがあるんだ。……っと、その前にちょっと待って」