たぶん七緒の言葉を真似ているだけに過ぎず、からかわれているだけだろうが、そうされて平気ではいられない。


「なにかあっただろ」
「……え?」


ドキッとした。彼の胸に顔を埋めているため、くぐもった声で聞き返す。


「帰ったときから様子がおかしい。話しかけてもうわの空だ」


憂鬱な気持ちを聖に気づかれていたとは。


「なにがあった?」


いつになく優しい声だった。普段お互いに冗談ばかり言ってふざけているのに、そんな雰囲気はまるでない。


「七緒?」


聖の手が七緒の背中をトントンとする。
話してごらん。そう言われた気がして、解けた彼の腕からゆっくり体を起こし、ソファの前にペタンと座る。