フライパンひとつをとっても大中小をひと通り。代用がきくから中くらいのをひとつで十分と言っても、「七緒の商売道具だろ」と譲らない。
包丁も同様に三徳包丁、出刃包丁、刺身包丁など売場にある全種類を買い上げた。これでは相当がんばって料理の腕前を披露しなくてはならない。
エントランスロビーまで行くと、先ほど対応してくれた男性コンシェルジュがすっ飛んで来た。
「お手伝いいたします」
「すみません、助かります」
ふたりで口を揃える。
コンシェルジュが七緒の荷物をすべて引き受けたうえ聖の分まで持とうとしたが、聖は「こっちは大丈夫です」と遠慮した。さすがにひとりで抱えられる量ではない。
部屋に到着し、キッチンカウンターに荷物を並べる。カゴや袋から取り出すと、広いスペースが見事に埋まった。てんこ盛りだ。
「ここを片づけたら夕食の準備をしますね」
「片づけなら俺もやるよ」
「聖さんはゆっくりしてください。これは私のお仕事ですから」
聖は数秒間考えるようにしてから……。



