「そうか? じゃあ頼んだぞ」
絶対に忘れるなよ?といった圧を送ってよこす。カゴに入れたものを何個か戻し、ようやく前に進みはじめた。
そのほかにもキウイやさくらんぼなどを選び、野菜売場や肉魚売場でも「あれがいい」「これもおいしいですよ」というやり取りをしながら、カゴがだんだんと山になっていく。
たいていひとりでしてきた買い物は、ふたりだとこんなにも楽しいのかと新たな発見だった。
「私たちも恋人とか夫婦に見えるのかな」
同じようなカップルを見て呟いた七緒のひとり言を、聖がすかさず拾う。
「そりゃ見えるだろ。こんなに仲良くじゃれ合ってるんだから」
そう言って七緒の肩をぐいと引き寄せる。おまけにチュッと音を立てて頭頂部にキスまで落とした。
「ちょっ、聖さん!?」
彼の唇が触れた頭を押さえ、とっさに見上げる。



