クスクス笑いながら返したら、いきなり唇に冷たいなにかを押しあてられた。
「開けて。試食があった」
言われるままそれを迎え入れると、夏みかんの爽やかな酸味が口の中に広がった。
「わ、おいしい。聖さんも、はい」
彼の口にも切り分けた夏みかんを持っていく。素直に口を開けた聖は、すぐに「うまいな、これ」と目を丸くした。
「よし、たくさん買っていこう」
次々手に取り、七緒が指南した選別方法を実践してカゴに入れていく。
「そんなにいっぱい?」
七個、八個とカゴに投入していく聖の手を止める。
「この味なら、いくらでもいける」
「でも、傷んじゃいますから、私が次に来たときに買いますよ」



