敏腕外科医はかりそめ婚約者をこの手で愛し娶る~お前は誰にも渡さない~


「七緒も自分で食べたいものがあったら遠慮なくカゴに入れたらいい」
「ありがとうございます。聖さん、果物はなにが好きですか?」
「俺はそうだな……みかん、かな」
「それじゃ夏みかんを買いましょうか」


ちょうどその売場の前を通りかかったため足を止める。


「じゃ、これとこれと……」
「あっ、聖さん、待ってください。よく選んでからカゴに入れないと」


手当たり次第に放り込んだ聖を制する。


「選ぶ? どうやって?」
「全体的に濃い黄色でハリがあるものがおいしい夏みかんです。ヘタの部分は緑色で、ずっしりと重みがあるものがいいですよ」
「へぇ、七緒は料理だけじゃなく食材選びも達人か」


感心したように言われて少し照れくさい。


「達人なんて。たぶん主婦の方たちはみなさんそうして選んでいると思います」
「すごいな。主婦も立派な仕事だ」
「そうですね。お給料に換算したらサラリーマン並みの働きだって、なにかの記事で呼んだ気がします」